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就職ナビサイトとは違う、自由な発信ができる自社採用サイト
新卒採用に関しては、3月1日より各企業から採用情報が公開され、エントリー受付が開始します。これに合わせて、自社の採用サイトをリニューアルした企業も多いのではないでしょうか。しかし、他のコラムでもお伝えしている通り、採用サイトは一度制作し、公開すれば終わりというものではありません。
本コラムでは、新卒採用が本格開始する3月からの「企業の採用サイト」の意味や役割について、特に就活ナビサイトとの比較や使い分けといった点を見ながら、改めて考えてみたいと思います。
まず、大きな違いは、フォーマットや情報量にあります。
就活ナビサイトは比較検討がしやすいようにフォーマットが固定化されていて、掲載内容や文字数、使用できる写真等に制限があります。また、原稿を作成するのは広告代理店やナビサイト側となるのが特徴です。
一方、自社の採用サイトであれば、デザインやフォーマット、どんな文章や写真等の素材で情報発信するかも自由です。当然、ナビサイトの掲載内容よりも更に詳しく、深く発信することが可能です。自社に興味を持ってくれた学生に対して、その会社の魅力やそこで働くことのメリット、その他選考に関する情報などを十二分に提供することで、他社との差別化も図れます。
面接官をあらかじめ知っておいてもらうことで、面接を充実させられる
自由度の高い「採用サイト」だからこそ充実させるべきコンテンツの代表格が、学生からもっとも注目される「社員紹介」です。
ナビサイトでも「先輩の声」コーナーがある場合がありますが、掲載数に制限があったり、一定のフォーマット内での掲載になるため写真のサイズが小さくなってしまったりと思うように掲載ができません。自社採用サイトであれば掲載枠の制限がないので、多様な部署や職種、社歴の社員をそれぞれしっかり紹介することができます。採用サイトは学生からの注目度の高い「社員紹介」コンテンツを自由に掲載することができるのです。
また、「社員紹介」コンテンツを充実させる際にお勧めしたいのが、面接官を務める社員や役員を登場させておくことです。
学生からすれば、就活における「面接」というのはほぼ初めて「企業」というものと接する機会となります。これは企業の側にいるとなかなか気づけないものですが、学生が普段接している人間関係というのは家族や大学、アルバイト先、趣味のつながりくらいです。その中での「面接官」という存在は、非常に緊張を強いるものといえるでしょう。
第一印象でその人のイメージが7割決まるともいわれますが、大事な面接で学生に力を発揮してもらうには、その緊張が解けるよう努めることが大事です。
ですから、社員紹介のコンテンツでは、その社員の入社に至った理由や思い、会社での仕事内容、今後の目標などとともに、その人自身の人となりが分かるようなエピソードも載せておくとよいでしょう。また、面接の日程を連絡する際に「当日はこの社員が面接でお会いします」などとして、社員紹介コンテンツのリンクを伝えておくのがおすすめです。そうすることで学生は心の準備ができますし、「こういう仕事をしている先輩なら、こういうことを質問してみよう」といった、もう一段上の準備まで行うこともできます。緊張せずリラックスして面接に臨み、本領を発揮してもらうことは当の学生にはもちろん、その学生の本質をしっかり見極めたい企業側にとっても役立ちます。面接の時間がより有意義なものになりますよね。
口コミサイトで生じた誤解を、自社発信で払拭
もう一つ、自社の採用サイトで情報発信する際に念頭に置いてほしいことがあります。それは、いわゆる就職・就労情報の口コミサイトの存在です。今の時代、ご飯を食べに行ったり物を買ったりするときに口コミサイトでお店や商品をチェックするという人が少なくありません。「企業」についても口コミサイトがいくつかあり、中には新卒だけで約25万人が登録しているようなものもあって、その影響力は侮れません。
そして、口コミサイトでとりわけ注目されやすいのが「残業が多い」「辞める人が多い」といったネガティブな情報です。真偽のほどは分かりませんし、こうした書き込みはつい「盛ってしまいがち」なものです。また、数年前の情報がそのまま掲載されていることもあります。過去の事実や現在の状況とは異なる情報も、口コミサイトに投稿されている情報は一旦、学生にインプットされてしまっていると思っておきましょう。
しかし、そのような場でネガティブなイメージが発信されてしまっているとしても、自社の採用サイトで十分な情報提供を行っていれば、それを払拭することができます。たとえば、かつては残業が多かったとしても、「ノー残業デー」や社員間でのスケジュールの共有といった制度の整備・浸透が進んでいることを数値データで示したり、自分たちの働き方を考える社内横断プロジェクトについてそのメンバーから紹介してもらったりするなど対応すれば、学生の不安を取り除くことができます。逆に、そうした社内の課題を背景とともに伝え、「これから入社する皆さんと一緒に改善させていきたい」などと呼びかけるのも手かもしれません。
ネガティブイメージを払拭しようとする際に気を付けてほしいのは、聞こえの良い情報ばかりを発信しないこと。互いの認識のミスマッチは早期の離職につながる一因となります。現状を正しく説明したり、抱えている社内の課題に対するポジティブな取り組みを紹介したりするには、やはり自由度の高い自社の採用サイトが最適です。
日常的な発信から長期目線のレポートまで、活用法はさまざま
自社の採用サイトは、ナビサイトと異なり、自分たちが伝えたい情報や伝えるべきと判断した情報を、自由に伝えられる絶好のメディアです。学生はエントリーをするとき、ほぼ間違いなく企業の採用サイトを見ます。一度サイトを作ったらほったらかし、ではもったいない。社内で行ったお花見イベントでも、クラブ活動のフットサルの結果でもよいので、日々発信していくことを心がけましょう。採用サイトが“動いている”感じがすると、学生からも好感をもたれやすいものです。また、年単位に運営される就職ナビサイトと違い、自社の採用サイトではたとえば3年前から全社で取り組んでいることなどを時系列で伝えることもできます。そうした「採用サイト」の特色を意識して発信できるとよいですね。
自社の採用サイトのなかで、新入社員や内定者に、次の代に向けた情報発信を行ってもらう手もあります。学生目線に近いことで、人事担当者では気づけない自社の魅力が引き出されるかもしれませんし、彼らにとっても学生に責任持って情報を伝えるという勉強になります。たとえば、新入社員が社長に直接インタビューして経営理念を聞き、自分たちの言葉で発信するなどすれば、座学での研修よりもより深く本質的に、企業理解を進めることができるでしょう。
「自社の採用サイト」は、工夫して積極的に活用することによって、多くの役割を担います。ぜひ今一度、自社の採用サイトの活用のしかたについて見直してみてください。