求職者が知りたいポイントを、意識的に発信すること
プロコミットでは人材紹介を通じて長年、求職者の生の声に触れ、転職活動中にどんなことが気になるのか。検討する企業について、どんなことを知りたいと思うのかといったことを聞いてきました。採用に力を入れたい企業にとっては、これこそが今、発信すべきポイントといえます。
転職者が気になっているのは、大きく次の6つです。どのような事業をやっている会社なのか
その事業にどのような意義があるのか
どのような仕事をすることになるのか
どのような人たちと働くことになるのか
どのような環境で働くことになるのか
会社の理念やカルチャーはどのようなものか
①どのような事業をやっている会社なのか
これは当たり前のようですが、重要なポイントです。候補者は、その会社がどんな事業をやっているのかを、当然ながら知りたがっているものです。たとえば、「わたしたちは物流会社です」と一口に言っても、世界中に拠点をもつ海運業もあれば、倉庫業や、ラストワンマイルを担う個人宅向け宅配事業など、会社によって異なります。自分たちや顧客にとっては当たり前のことも、社外向けには分かりやすく伝えられなければなりません。
その際には自社や業界の専門用語や常識内で語らず、求職者がゼロベースで理解しやすいように説明することが大切です。また、キレイなフレーズや言い回しよりも、事業の“実際”が伝わることを重視しましょう。
表現の仕方や伝え方については、採用担当だけでなく、採用活動に関わるメンバー、例えば面接担当者や社員インタビューの回答者も意識を合わせる必要があります。
②その事業にどんな意義があるのか
最近の傾向として、求職者はますます、仕事の社会的意義ややりがいを重視するようになっています。もちろん個人差はありますが、給与や待遇だけではない価値観が少なからずあるのです。ですから、ぜひ一度、自分たちの事業の意義ややりがいがどこにあるのかを言葉にしてみてください。
自分たちにとっては当たり前になっている日々の仕事でも、社会には必ずつながっており、意義があるはずです。「ウチの事業は、そんなに特別な仕事ではないから・・・」などと気にする必要はありません。顧客からどんな感謝の言葉をもらったことがあるかなどを、社員からヒアリングしてみてはいかがでしょうか。
たとえば運送業であれば、「いつも時間どおりに来てくれて助かる」「納入時間が遅れたりしたら、お店が開けられないからね」「買いに来てくれるお客さんに迷惑掛けられないからさ」などと言ってもらえるかもしれません。だとすると、「時間どおりに届ける」という、一見当たり前のことが実はとても喜ばれているのだとわかります。
このように、ちょっとしたことの積み重ねが、実は会社に対する評価になっていて、その仕事の意義といえるのです。
求職者は決して急成長中のインターネット企業のような華々しい成長ストーリーを求めるばかりではありません。むしろ、確実に社会に必要とされている、という「安定性」も求職者にとっては魅力的な要素の一つなのです。
③どんな仕事をすることになるのか
営業、経理、経営企画・・・。言葉にすると、どの会社においてもすべて同じ仕事のように思われますが、それぞれ求められていることは違うはずです。求職者はまさに、それを知りたがっています。
特にキャリア採用の場合は、他社で仕事をした経験がありますから、それと同じか、近い感じか、あるいは異なるのかなど、さらに気になることでしょう。
仕事内容は求人票や採用サイトなどになるべく詳しく、具体的に書くよう心がけます。例えば、一口に「営業」と言っても、支給されたリストにテレアポを行っていくアウトバウンド型なのか、既存の営業ルートを回るだけなのか、あるいは問い合わせや資料請求者への対応がメインなのか、会社や事業部によって様々な営業スタイルがあります。また、「一日の流れ」として出社から退社までのスケジュールを示すといったように、求職者が自分に置き換えてイメージしやすいように説明しておくことも効果的です。
④どんな人たちと働くことになるのか
求職者は間違いなくこれを知りたがっています。どんな人たちがいるのだろう、と。一緒に仕事をするかもしれない人たちが、どんな仕事をしていて、どんなことを考えて、どんな目標を胸に働いているのだろう、ということが知りたいのです。
新卒であれば、入社して何年でどのくらい成長し、どんな仕事を任されるようになっているのかも気になるでしょうし、キャリア採用であれば、どのようなバックグラウンドの人がいるのだろうかに関心が行くかもしれません。
できるだけ、さまざまな部署、社歴、経験のメンバーの様子がわかると、求職者があなたの会社で働くイメージをしやすいでしょう。面接で会える人数には限りがありますから、採用サイトに「社員インタビュー」ページを作るのがおすすめです。
また、社長のメッセージも大切です。直接、求職者に語りかけるようにして、たとえば創業の思いや事業の将来性、そして一緒に働く人たちに期待していることなどを発信してみてください。募集要項だけでは感じられないメッセージが、求職者には響くはずです。
⑤どんな環境で働くことになるのか
これまでのポイントに比べれば優先順位はやや下がるかもしれませんが、これも求職者が知りたいと思っていることの一つです。
一般的に、面接に訪れた求職者が実際に見ることができるのは、受付と、面接を行う応接室や会議室といったスペースのみ。しかし、自分が仕事をする場になるかもしれないわけですから、執務スペースも大いに気になるものです。必要以上にキレイに見せようとしなくても構いません。工場であれば、その現場を見せるのでも良いでしょう。休憩室や更衣室といったバックヤードというのもあるかもしれません。
ただ見せるだけではなく、どういう思いを込めているか、どういう狙いがあるのかなどを併せて伝えるという手もあります。
⑥会社の理念やカルチャー
これらも、最近とくに求職者が知りたがっていることの一つです。たとえば面接で一通りの話が終わり、「最後に、そちらから何か質問はありますか?」と問いかけた時に求職者から出てくるのが、「御社の理念やカルチャーは何ですか?」です。求職者は社内の雰囲気やノリといったものを知りたがっています。それが、「理念やカルチャー」という言葉に表されるわけです。
実際は働かなければわからない、ともいえますが、各社、文章や写真、動画などで工夫をし、何とかこの点を伝えようと努力をしています。その際に気をつけたいのは、写真や動画は伝えたいカルチャーに沿ったものにする、ということです。ワイワイとにぎやかなノリが特徴であれば、それが伝わるビジュアルにすべき。質実剛健な真面目さが特徴なら、それが伝わるものを見せるべきなのです。
また、言葉として定義しておくことも大切です。考え抜かれた言葉は、それだけで求職者に本質を伝えられるからです。
たとえば広告会社を例に取ってみましょう。
「広告はたった1つの指標で評価することができます。それは『効果』です」といった理念があり、「よって、私たちが日々追いかけるのはどれだけ出稿量をいただけるかではなく、どれだけの広告効果を出せたかなのです」という価値観を言葉で伝えられれば、単なる営業会社とは一味違う会社だと伝えることができます。それを伝える写真は営業成績のグラフや達成を示す花などでは決してないはずです。お客様の広告効果をチェックする画面を立ち上げている写真に「毎朝まずこの画面をチェックします」などと書いてある。そんな伝え方が効果的です。
そのように、会社のスタイルやノリ、雰囲気、空気感といったものが、それが示す思いや大事にしていることなどとともにうまく伝わると、ミスマッチを起こさずに済みます。理念やカルチャーといっても、キレイに額装されたお題目的なものが求められているわけではありません。求職者にうまく感じ取ってもらえるように、発信することが大切です。
以上、求職者が知りたがっていることの主要なものを挙げました。
これらをすべて事前に、かつ、効果的に理解してもらうことは簡単ではありません。もちろん、完全でなくて全く構いません。6つのポイントすべてで10点満点を狙わなくてもよいのです。
特に新卒採用の場合には、求職者は学生で、仲間内やSNS、掲示板などの噂に引かれやすいものです。そうした漠然とした情報の中で右往左往させてしまうよりは、やはり自社できちんと情報を発信して、受け止めてもらえるよう努めることが大切です。
そして何よりも、これら6つの求められるポイントを伝えようと「努力をしている姿勢」というのは、間違いなく全ての求職者に伝わります。応募が来る・来ない、面接が進む・進まない、内定を応諾してもらえる・してもらえない・・・。そういったことは、「会社からの情報発信」の段階からスタートしているのです。