近年の新卒採用では、労働人口が減少しているにも関わらず採用基準が上がっているために優秀な学生に内定が集中したり、就職活動期間が短いことから企業研究が不十分なまま選考を受けてしまうなど、様々な理由で学生が内定を辞退しています。
しかし、せっかく採用した学生を企業は手放したくないはずです。
では、なぜ学生が他社を選んでいくのでしょうか。どうすれば学生の心を捉えられるのでしょうか。
1. 学生が内定を辞退する理由とは
内定を辞退した学生にも様々な理由があると思いますが、応募したからには仕事内容や事業内容に関心があり、働いてみたいと思っていたに違いありません。
では、なぜ内定を辞退したのでしょうか。その原因と学生の気持ちをまとめてみました。
(原因)
採用担当者や面接官の身なりがビジネスシーンに合わない、説明会などの段取りが良くないなど採用担当者や面接官の印象が悪い。
<学生の気持ち>
企業紹介とイメージが違う、このような社員と一緒に働きたくない。
(原因)
求人票では面接が2回だったのが4回になったり、筆記試験の内容が適性検査から急に英語に変更になるなど選考方法がずさん。
<学生の気持ち>
経営方針が変わりやすい企業は不安で働きたくない。
(原因)
保護者や同級生、インターネットで企業について悪い情報を見聞きしたが、採用担当と連絡がつかない。
<学生の気持ち>
「疑問が解決できない状況では、不安なので入社したくない」と他社を受験し始める。
(原因)
企業のパンフレットやHPなど限られた情報源だけでは、自分が働いているイメージできない。
<学生の気持ち>
「自分にはもっと合う企業があるのではないか」と他社を受験し始める。
この他、内定の辞退を考えていなくても「自分のスキルで入社後ついていけるのか」「人間関係でつまずいてしまうのではないか」「職場にとけこめるだろうか」など不安を抱えています。
では、学生を繋ぎとめるためにはどうすれば良いのでしょうか。
2. 内定者フォロー5つの極意
(1)内定者フォローは選考時から始まっている
会社説明会から学生の企業選びは始まっています。
まず、「採用担当は企業の顔」という意識を持ち、清潔感のある服装で応対しましょう。
また、求人票等に記載した選考方法は変えてはいけません。無意味な試験や面接をいたずらに増やしていないか、採用計画から見直してみましょう。もし選考中に、予定していない面接が必要になった場合は、納得してもらえるように丁寧に説明しましょう。または、選考には関係しない「面談」という形式をとる方法もあります。
(2)疑問と不安は即解決!
1番重要なことは、不安や疑問をすぐに吸い上げる関係を築くことです。
最近は内定者専用サイトやSNSを利用した内定者フォローが主流になっています。内定者がすぐに連絡が取れるようなツールを利用して、きめ細かな応対をしましょう。
なお、フォローする担当者を採用担当者か、新人研修を担当する社員にすると学生が心を開きやすくなります。
また、いくつも内定をもらっている内定者に対しては、採用時の評価をフィードバックするだけでなく、内定者が描く将来のビジョンを聞き、そのビジョンを実現するために克服するべき弱点をアドバイスして、入社後のイメージを描けるような面談を行いましょう。
内定者を威圧するような面談をしてはいけません。内定者を怖がらせるような面談をすれば、企業全体のイメージダウンになり、来期の新卒採用で跳ね返ってくるだけです。
(3)内定者同士の絆を深められるツールを用意してあげよう
内定者専用サイトやSNSを利用すると内定者同士で自由にコミュニケーションが取れるようになり、内定者同士の絆が生まれて内定式や懇親会で実際に会う度に絆が深まります。
また、内定者専用サイトやグループウェアサービスでは、オプションでe-ラーニングを受講できるサービスがあります。多くの内定者が入社までに身につけておきたいスキルについて不安を持っていますので、利用を検討してみましょう。
(4)懇親会や内定者研修合宿で会社に馴染んでもらう
懇親会や内定者研修でも少し工夫するだけで内定の辞退を防止できます。
まず、懇親会では若手社員に内定者と同じテーブルに座ってもらいます。ゲーム形式での自己紹介やグループワークを行い、内定者と若手社員が自然にコミュニケーションを取れるよう誘導することで、入社後の人間関係についての不安を払拭しましょう。
また、内定者研修では来季の経営計画や会社の組織などを解説するプログラムを取り入れると、会社の一員であるという意識を持ってもらえます。
(5)内定式では内定者を歓迎しているムードを演出
内定式を経営陣と採用担当者、内定者で行う企業が多いようですが、企業規模や採用人数によっては、内定者より企業側の出席者が多くなり内定者が委縮してしまったり、会場のほとんどを内定者が占めてしまい、企業側の出席者の影が薄くなってしまうことがあります。内定者が委縮してしまうのも困りものですが、企業側の出席者の影が薄くなってしまうと企業側が内定者を歓迎している空気が伝わりません。
内定者数が少ない場合は、配属先の社員や関係部署の社員にも参加してもらい、内定式で顔合わせを行うなど、入社の受け入れ準備ができていることを伝えましょう。まだ、配属が決まっていない場合や内定者数が多い場合は入社後に使用する物を内定のお祝いとしてプレゼントすると、「自分はもうすぐ入社するんだ」という実感を内定者に持ってもらうことができます。
内定辞退は新卒だけでの問題ではありません。この5つの極意は中途採用でも応用できます。
せっかく採用した優秀な人材に選考辞退や内定を辞退されないためにも、まずは採用計画や説明会の段取りなどの見直しから行ってみてください。