第10回 採用サイトを活かす写真撮影講座(終)
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写真の”質”を上げる「レンズ」の話
本コラムでは、「採用HP制作担当者の皆様が、プロに頼らず自社内で上手に写真撮影するための基礎知識」について、写真の重要性から始まり、光の活かし方や構図、基本的な機能について9回に渡ってお伝えしてきました。
最終回となる今回は、『レンズ』についてお話します。少し専門的な話になりますが、知っておくと写真クオリティにも大きく差がつきますので、ぜひお付き合いください。
結論からお伝えすると、採用HP用に人物撮影するのに最適なレンズは、以下2条件の両方を満たしたものとなります。
①単焦点レンズ(F値1.8以下に設定可能にできるもの)
②焦点距離50mm (フルサイズカメラの場合の焦点距離)
レンズは大きく分けて、以下の「単焦点レンズ」と「ズームレンズ」に二分されます。
・単焦点:焦点距離が一点のみ(ズームリングなし)
・ズーム:幅広い焦点距離(ズームリングで調整)
焦点距離が一点固定(単焦点)か可変(ズーム)かというのが主な違いですが、焦点距離の違いは画角、つまり“撮影時の切り取り範囲”に影響してきます。
焦点距離が長い(=数値が大きい)ほど、望遠となって被写体をアップに、逆に短い(=数値が小さい)ほど広角となってワイドに撮影できます。
恐らく多くの方が最初に購入するレンズは「ズームレンズ」だと思われます。
なぜなら、本体セット売りが多いこともありますが、レンズ上についているズームリングを手元で回すだけで、アップ(寄り)・ワイド(引き)を変化させることができ、非常に便利だからです。
一方で「単焦点レンズ」は、焦点距離が一点固定でズームリングがついてないため、被写体をアップで撮りたければ自ら動いて近づき、逆にワイドにしたければ自分が下がって距離をあけなければならず、不便です。
しかし、それでも「単焦点レンズ」をオススメするのには理由があります。
それは「F値」の最小設定可能値が「ズームレンズ」に比べて非常に小さいからです。(最小F1.8以下が一般的)
前回の記事を思い出して頂きたいのですが、「F値」を小さく設定すればするほど、前景・背景のボケ度合いが強まるとともに、ピントを合わせた被写体は鮮明に描写され、被写体が印象的かつ美しく描写される『ボケ写真』となります。
「ズームレンズ」では残念ながら、この「F値」の最小設定値がF3.5~5.6であることが一般的。10万円以上する高額なレンズでもF2.8程度までしか下げられないため、背景ボケ度合いも弱くなり被写体描写の美しさに限界が出てしまうのです。
そして、単焦点レンズの中でも特にオススメなのが「焦点距離が50mm」のものです。
その理由は3つあります。
①画角
撮影距離1~3m(被写体と会話可能な距離感)で被写体の上半身を写真に収めるのにちょうど良い画角である
②被写体の見え方
レンズは屈折効果があるため、焦点距離に応じて写真上で変形が発生して実物と異なる見え方をしてしまうが、「焦点距離50mm」は変形が最も少なく人間が普段見ている形に一番近いと言われる
③価格
50㎜の単焦点レンズは初級者に美しい写真の撮影体験をさせるためか、各メーカーとも2~3万円程度と比較的安価で提供している(初心者をレンズの沼に引きずり込む「撒き餌レンズ」とも言われます。笑)
皆さんがお持ちのレンズにも以下写真のように「焦点距離」と最小「F値」が記載がされていますのでぜひ確認してみてください。
※記載位置は各メーカー・製品により異なる
繰り返しますと、ぜひ使用して頂きたいのは「単焦点レンズ」で「焦点距離50mm」です。
レンズはどうしても投資が必要となってしまいますが、驚くほどに写真が綺麗になるので是非試してみてください。
(F値を小さく設定して撮影する方法は前回記事ご参照)
※推奨焦点距離「50㎜」はフルサイズ換算時の数値。APS-C、マイクロフォーサーズなどの機体では画角に対する焦点距離が異なるため、購入にあたって不安な方はカメラ屋さんや家電量販店にご自身のカメラを持っていき「フルサイズ換算で50mmのレンズを探している」と店員さんに相談してみて下さい。
最後に、採用HP用途ではありませんが、何をどう撮りたいかによって、最適なレンズは広角、望遠、魚眼、マクロなど変わってきます。
参考まで、以下に各レンズの参考写真をのせておきますので、ご参照ください。(どんどんレンズを買い足す“レンズ沼”にハマらないようご注意下さい。笑)
本コラムは以上で終了となります。ご愛読頂き本当にありがとうございました。
執筆者
株式会社CAPTURE EMOTION
早川 伸夫
人物写真を最も得意とし、法人・個人のプロフィール写真撮影を中心に活動。
JAPAN PHOTO CONTESTや東京カメラ部主催フォトコンテスト等で多数の入賞経験あり、自然風景・建築物など、どんな被写体も美しく撮ることに定評あり。
また「写真は左脳(論理)で上手くなる」との持論から、主に中小企業・個人事業主を対象としたカメラスクールを運営し「美しい写真を撮るための方法論」を伝えている。