リリーパディング時代、“長く働ける会社”だけでは選ばれない理由
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若手のキャリア観変化と、これからの採用サイトに求められること
近年、若手世代のキャリア観を語る中で、「リリーパディング(Lily Padding)」という言葉が注目され始めています。
これは、睡蓮の葉を飛び移るカエルのように、複数の会社や仕事を渡り歩きながら、自分に合った経験やスキルを獲得していくキャリアスタイルを指す言葉です。従来の「ジョブホッピング」がどこかネガティブな響きを持っていたのに対し、リリーパディングは“戦略的なキャリア形成”として語られることが多いのが特徴です。
実際、若手世代の中には、「一社で長く勤めること」そのものをゴールにしていない人が増えています。会社への所属よりも、「どんな経験ができるか」「どんなスキルが得られるか」「市場価値が高まるか」といった観点でキャリアを考える人が増えているのです。
そして、この変化は単なる“若者の価値観の変化”では終わりません。企業の採用活動、採用広報、そして採用サイトのあり方そのものに、大きな影響を与え始めています。

なぜ今、「リリーパディング」が注目されているのか
そもそも、なぜこのような価値観が広がっているのでしょうか。
背景には、働く環境や社会構造の変化があります。以前は、「一社で長く働く」「年功序列で昇進する」「会社の中でキャリアを積み上げる」という考え方が一般的でした。しかし現在は、終身雇用の崩壊、AIやテクノロジーによる仕事の変化、副業・フリーランスの普及、SNSによる他社比較の容易化など、働き方を取り巻く環境が大きく変わっています。
特に若手世代は、SNSや動画メディアを通じて、他社の働き方やキャリア事例に日常的に触れています。以前よりも「この会社しか知らない」という状態になりにくく、常に外部の選択肢が視界に入っているのです。
その結果、「今いる会社で何年働くか」よりも、「どんな経験を積めるか」「市場価値が上がるか」を重視する傾向が強まっています。つまり、“会社への所属”ではなく、“キャリア形成”が主役になっているのです。
「安定しています」だけでは響きにくくなっている
こうした変化の中で、採用サイトの見られ方も変わってきています。
これまでの採用サイトでは、「安定した経営基盤」「福利厚生」「働きやすい環境」「アットホームな社風」「長く働ける会社」といった要素が重視されてきました。もちろん、これらが不要になったわけではありません。特に働きやすさや制度面は、今でも重要な比較ポイントです。
ただし、若手世代の価値観が変わる中で、“それだけでは決め手になりにくくなっている”のも事実です。
なぜなら、求職者側が見ているものが変わっているからです。以前は「この会社に定着できるか?」が重視されていました。しかし今は、「この会社で、自分は何者になれるのか?」という視点で会社を見る人が増えています。
つまり、会社を“所属先”として見るのではなく、“キャリア投資先”として見ているのです。
若手が知りたいのは「仕事内容」より「経験価値」
最近の採用サイトを見ていると、仕事内容や制度説明は充実している一方で、「そこでどんな経験が積めるのか」が十分に伝わっていないケースをよく見かけます。しかし、リリーパディング的な価値観を持つ求職者ほど、実際にはそこを重視しています。
例えば、「若手でも裁量を持てるのか」「どんな挑戦機会があるのか」「どんなスキルが身につくのか」「どんなキャリアの広がりがあるのか」といった“経験価値”です。
「成長できます」という抽象表現よりも、「入社1年目から顧客提案を担当」「職種を横断した経験が積める」「AI活用を実務レベルで経験できる」「若手でも事業づくりに関われる」といった具体的な情報の方が、はるかに響きやすい時代になっています。
採用サイトにおいても、「どんな仕事か」だけではなく、「その仕事を通じて、どんなキャリアが築けるのか」まで伝える必要が出てきているのです。

「辞めないでほしい」が強すぎると、逆に重く見えることもある
最近の採用広報で気をつけたいのが、“囲い込み感”です。
例えば、「家族のような会社です」「一生の仲間です」「長く働いてほしい」といった表現は、以前よりも重く受け取られるケースがあります。もちろん、会社として定着してほしい気持ちは自然なものです。しかし求職者側は、「まずは自分に合うか見極めたい」「幅広い経験を積みたい」「将来の選択肢を増やしたい」と考えていることも少なくありません。
そのため、「うちにずっといてほしい」というメッセージが強すぎると、“自由度が低そう”“キャリアの幅が狭そう”と感じさせてしまう場合があります。
むしろ最近は、「ここで得た経験が、将来の選択肢を広げる」という見せ方の方が、結果的に信頼されやすい傾向があります。これは決して「辞めてもいい」という話ではなく、「この会社で働くこと自体に価値がある」という状態をつくることが重要になっているのです。
これからの採用サイトで重要なのは、「だけネタ」
採用市場が似たような情報で溢れる中で、求職者は複数社を比較しています。そのとき重要になるのが、「この会社ならではの経験」をどれだけ言語化できるかです。
例えば、「若手でも経営層と近い距離で働ける」「幅広い業務を経験できる」「特定領域で高い専門性を持っている」「顧客との距離が近い」「意思決定が速い」「新しい技術やAI活用に積極的」といった特徴です。
重要なのは、“良い会社”を目指すことではありません。実際、求職者から見れば、「働きやすい会社」「成長できる会社」という表現だけでは差が見えにくくなっています。
だからこそ、「この会社では、どんな経験ができるのか」を具体的に伝えることが必要です。採用サイトの役割も、単なる会社紹介から、“経験価値を伝えるメディア”へ変化していると言えるでしょう。
実は、大企業より伝えやすい価値もある
この流れの中で、実は大企業よりも魅力を伝えやすい企業もあります。
例えば、「一人あたりの裁量が大きい」「意思決定が速い」「経営陣との距離が近い」「幅広い仕事を経験できる」「若手でも挑戦機会がある」といった特徴を持つ会社です。
こうした環境は、“キャリア形成”を重視する若手にとって、大きな魅力になる可能性があります。特に最近は、「若いうちから挑戦したい」「仕事の全体像を見たい」「手触り感のある仕事がしたい」と考える求職者も増えています。
つまり、「有名企業だから選ばれる」だけではない時代になってきているのです。採用サイトでも、会社規模や知名度だけではなく、“どんな経験が得られるか”を具体的に見せられる企業ほど、強くなっていくでしょう。
「定着」ではなく、「選ばれ続ける会社」へ
リリーパディング時代において、企業側が持つべき視点は、「どう辞めさせないか」だけではありません。
むしろ、「この会社で働く価値を、どう伝えるか」がこれまで以上に重要になります。
若手のキャリア観が変わるなら、企業側の採用コミュニケーションも変わる必要があります。採用サイトは、単なる求人情報ではなく、“その会社でどんな未来が描けるか”を伝えるメディアへ変わっていくでしょう。
そしてこれからは、「どんな経験ができるのか」「どんな成長機会があるのか」「どんなキャリアにつながるのか」を具体的に伝えられる企業ほど、選ばれやすくなっていくはずです。
“長く働ける会社”を伝える時代から、“ここで働く価値がある会社”を伝える時代へ。採用サイトにも、そんな変化が求められ始めています。

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